EC通販市場は、もはやレッドオーシャンに。

コロナ禍で益々拡大しているEC通販市場ですが、もはやレッドオーシャンと言えるのではないでしょうか。

かつてのEC通販は利用者の急拡大により、参入者の伸び以上に市場が拡大してきたため、競争者が少なく先行者利益が約束された未開拓の成長市場(ブルーオーシャン)でした。
しかし、成長市場には参入がひしめき合うのは道理。
ましてや、過去の通信販売以上に容易に始められ、また、そのインフラも整った現在、EC通販市場にはますます参入が増えるでしょう。
既に大手流通業をはじめ、資本力を持った企業が本格的な参入は多く、小規模事業者にとっては、EC通販市場はかつてのブルーオーシャンから熾烈な競争下で生き残りをかけて戦わなければならないレッドオーシャンへと一変してしまいました。
さらにAmazonや楽天市場、ZOZOTOWNを始めとする大手EC通販企業はモールやマーケットプレイスといった自社のEC基盤(プラットフォーム)を持ち、そこに多くの出店、出品者が参加し、さらにそこに生活者が集まっていきます。
強者だけがさらに力を増し、実質的な業界標準のECプラットフォームとなり、ひとり勝ちするという構図が見えます。
少なくとも売上規模を追求する限りにおいて、とても彼らには敵いません。

○さて、そのモール出店の仕入れ販売のみに未来はあるのか? これからEC通販を始める場合、大きくは前述のようなモールに出店する方法と自社でEC通販サイト運営をする独自ドメイン店舗の2つの展開があります。
前者はモールに集客力があり、来訪者は購買意欲を持っている=すなわち、購買確率が高いというメリットがあります。
有名なモール(プラットフォーム)ほど集客力があり、たとえば、Amazonならば、月間のアクセス数は実に約5.4億(2018年8月)で、1日あたりでは150万回になる。かたや楽天市場は約3億5,900アクセス。
ところが、そうしたモールには、これもまた膨大な数のお店が出店しているため、単に出店しただけではその中に埋もれてしまい、期待したような集客が得られない状況にあります。
結果として、モール内での露出度を高めるための広告投資が過剰なまでに必要となっています。
そうした状況も影響してか、楽天市場に参加する約5.1万店(2020年10月時点)の中で、利益が出ているお店は1割にも満たないと言われています。
いずれにせよ、モール出店をしても、売上高はともかく、利益という面では健全な成長は極めて難しいステージに入っていると考えざるを得ません。特に比較検討されやすい仕入れ商材では価格競争に陥ることは火を見るより明らかである。
自社の通販粗利(売上-商品原価-梱包資材費-送料原価-受注関連費など)を30~50%に設計できないと、広告費10~20%や販売手数料10%+αが出ないのは単純計算でも分かります。
そしてリアルの商業施設でも良くあるようにテナントの入れ替えが新陳代謝になる。ただし、モールの場合は露出という意味でテナントや商品群の入れ替えのように見えてくる、ということ。  

  ○生き残りの鍵はCRMでは?この状況をブレークスルーする鍵はCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)ではないでしょうか。
つまり、視点を商品や価格に置くのではなく、顧客に置き、お客様の満足度を高め、より良い関係を築くことを最重要に取り組むことが、結果として売上や利益の増大につながるという考えであり、それに基づく事業運営です。 このためには、集客のみに頼った店舗(CPA経営)から、自店を選んでいただいた既存顧客を中心にした店舗づくりに重点を移すという経営方針(LTV経営)への転換が求められます。

  CRMやLTV経営とは具体的には、  

・ 顧客データベースなどを構築して顧客情報や顧客とのやり取りといった履歴情報を蓄積し、セグメンテーションの切り口や顧客ニーズの特定を行う。 

・ 顧客を分類し、ランク付けした上で、自社にとって重要な顧客を選別する。

・ ターゲットとした顧客のニーズに対応する商品やサービスを重点的に提供し、顧客を獲得する。

・ その顧客を維持するための取り組みを行い、それにより増収を図るといった活動です。
それを推進するには、自社の顧客リストを自由に使って、オリジナルなコミュニケーションを行えることが前提となるのですが、モール出店の場合は、この点で多くの制約が生じてしまいます。

結果として、モール出店への依存状態から脱し、自社のECサイト運営を中心に据えるあり方が求められます。
加えて、EC通販においてCRMを追求していくと、やがてこの後にご説明する「単品EC」という小規模事業体での運営可能なビジネスモデルにたどりつくことになるでしょう。