EC通販の事業構造
事業構造を考える際の重要な法則
EC通販は通常の小売業と経費比率が全く異なる。では原価、経費構造はどうなっているのだろうか?成功企業と失敗企業(利益が出ない企業)を経営分析してみるとはっきりしている。通販企業は小売、卸売(物流・配荷)商品開発をすべて行っているので原価率は低く、販売費は特に広告、宣伝費が極端に高比率になっているのが特徴である。注意しなければならないのは(公社)日本通信販売協会の発表データは平均値のため実際の企業実態ではないことである。参考として弊社の調査例を紹介する。
※前回の「EC通販の実行サイクル」から何本かYouTubeのことや自社商品にまつわる話題を書いたので、この続きとなります。
○3・3・4の法則
さてEC通販の経営指標に関する法則に「3・3・4の法則」がある。特に単品ECでは「商品原価を3割、販売促進費を3割、その他の経費と利益を4割に収めるのがよい」とする法則である。特に原価や販売促進費を低く抑えることが、EC通販を成功させる秘訣である。販促費は事業の年度の考え方~初期は売上と同等など、その事業フェーズや新商品デビュー時などでは指標も大きく変わる。そして最後の「4」は間接費が20%であるなら、営業利益が20%残せる状態で、画像の3/3/4モデルではコンピュータ関連費の行に20と入っているが、間接費(広告販促費を除いた販管費)全体のこと。
現在流通向けの販売が通常となっている場合や飲食のテイクアウトなどは、商品原価30%(原材料費ではなく)に抑えた設計はかなりの知恵をひねる必要がある。もちろん仕入れ商品では画像の左列の二つのように50%前後となり、抑えられるのは広告販促費。通常のメーカーさんなどが広告販促費が数パーセントというのに比べると10倍近く。いわば直営店費用も含んでいると考えるべき。
○1・5・4の法則
例えば健康食品やOTC医薬品や一部の化粧品では商品原価をもっと低い10%前後に設計する「1・5・4の法則」の適用が必要である。通信教育などのサービス業の業界では当てはまるが、他では十分検討する必要がある。その理由は、商品の価値、他との違いについて顧客に納得・理解を得るには非常にコストがかかるからだ。50%の費用が顧客とのコミュニケーション(広告及び販促=リピート/CRM費用)にかかると設定する。成功企業の多くはPL分析していくと法則の通りとなっているケースが多い。また、上述の「3・3・4」との中間に収まることが多い。顧客にとって、商品説明も十分必要な商品の魅力であり、そういう事を含めてEC通販で売れ続ける特性とも言える。消費者はもはや高くてもしっかり商品とサービスが充実しているところで買うもの(EC通販向き商品=D2Cが多い)と、とにかく安く買うものとを選別していることを肝に銘じたい。
また一部のEC通販企業では商品原価+広告費を合算して客単価の50%という指標管理を採用して、その他のフルフィルメント経費(受注管理システム、梱包送料、代金回収手数料、関連人件費など)を20%として、営業利益を20%という目標設定している場合もある。
ここに商品研究開発費やその他人件費が必要としても、営業利益は2桁台となる。
○既存顧客満足優先の原則新規開拓と既存顧客を維持するか、どちらを優先するか?
1人の新規顧客を開拓する費用は業種・商品・価格などによって異なり、一概にはいえない。しかし、経験的にはCPAは食品の場合で6,000円程度、アパレルの場合で2万円程度、健康食品や化粧品の場合で3は万円程度もかかると推定され、かなりの費用がかかる。ある一定数規模が必要な場合=事業規模の目標にもよるが、昨今では特にWEB広告の効率が悪くなっており、小規模と言えども低CPAとは言えない。また各種の規制(アフィリエイト広告や特商法の改正など)にも大きく影響されている。
さて仮にリピート活動で20%の人が購入したとすると、それが紙DMなら1通200円として1人あたり200円÷0.2=1,000円(既存顧客CPO)で注文が得られる。新規の場合は1,000円では注文が取れないことは先に述べた。だから、既存顧客を大切にすることを優先すべきである、というのが原則である。
またEメール1万通で10%の開封率、そこから10%のコンバージョンとしても1%の購入者(=100人)となり、既存顧客リスト(個人が識別できるメールアドレスやLINEのID等があるとすると)があってクリエイティブ費用以外は他の経費はほとんどかからないと言える。
EC通販の場合、店舗がないため、店を開いておく(営業する)ためにはECサイトやDMやTELなどの販促活動が常に必要となる。さらには、1年目の顧客が2年目、3年目にどれだけ残っているかによって利益が出るかどうかにかかってくる。繰り返すが、顧客が満足して数年間に渡る取引をできるようにしっかり販売活動を最適化しないと事業として成功は難しい。
例えば、弊社の直近事例「WEBサイトのクーポン」でも新規と既存客では5倍どころか(良く既存客は新規客の5倍効率とも言われる)、8倍にも10倍にもなって、かつ喜んでいただける。
ただし、EC通販会社へのインタビューでいつも上位に来るのは「新規顧客の開拓」となっている。次回はこの辺りを書きたい。最後までお読みいただき、ありがとうございました。