単品ECの基本戦略(3)
カスタマー・エクスペリエンス向上をめざしたCRMを実践する(顧客戦略)
CXとは!?
カスタマー・エクスペリエンスは「顧客経験価値」等と訳されますが、商品・サービスの選定、購入、利用、アフターサービスまでの一連の経験を通じて顧客が感じる価値という意味です。人は、そうとは意識していなくても、例えば店舗やEC通販で商品を購入する際、商品だけでなく店の雰囲気やそこでの接客応対等に対しても事前に何らかの期待や予想値を持っているのだそうです。
そして、実際に買い物をして、それが抱いていた予想や期待と大きく外れた場合、ストレスを感じ、不満足という感情が生まれます。
逆に期待した通り、あるいは期待以上であった場合はうれしいと感じ、満足感が生まれます。こういうメカニズムのため、顧客の満足を高めるためには商品だけにとどまらず、顧客が経験する一連の体験価値であるカスタマー・エクスペリエンス(CX)を高めるための取り組み(これをCX管理と呼びます)が大切になります。
CRM活動において
その意味で、CRM活動においてもお客様の期待通り、または期待を超える対応(顧客との交流や対話)を設計し、提供することにより、顧客満足を高め、最終的には自店へのロイヤルティを向上させ、ファンになっていただくことをめざすべきです。この実践こそがリピートを増やし、顧客の離脱を低減し、やがてLTVの最大化につながるのです。
私たちはふだん売るためのコピーや表現にばかり気をとられていますが、顧客の視点に立って考えれば、快適に買い物ができるためのさまざまな配慮があり、売ることを目的としないコンテンツを通じての相互コミュニケーションといったことはそのお店を評価する重要な要素なのです。
しかし、そのことに気づいても、各々の接点で顧客の期待値を超える対応を提供するというのは簡単なことではありません。
お客様のことをよく知った上で、おもてなしの気持ちをどう具体的に形にするのかが問われます。少なくともECパッケージソフトに標準装備されるようになってきたような機能、たとえば、自動的に返信されるサンキューメールや全顧客に一律のメルマガを配信するといったことしかできていない状況では、決してカスタマー・エクスペリエンスが高まることはないということは確かです。
もうひとつ重要な点は、ECであってもカスタマー・エクスペリエンスはオンライン上の接点だけに限らないということです。
商品を受け取る、代金を支払う、商品を実際に使う、あるいは、その際に不具合が発生する場合もある。といったリアルな体験が全て含まれます。
オフラインも含めた経験提供を設計する必要があるのです。
デジタルもアナログも
ところが現実には、例えば、ECの顧客とのコミュニケーションはメールやLINE等で行うものだという固定観念がありませんか。ECで買った人であっても自動で送られるサンキューメールよりも、手書きのお礼状が届く方がうれしく感じるはずです。
ECで買う人の全てが電話で話すことが嫌いなわけではありません。
特にコロナ禍では意味のある電話は喜ばれる傾向になるようです。というか、今までつながらなかった顧客が在宅勤務が増えて、ゆっくりと話せる機会が増えた!?
EC事業者でありながら顧客との関係づくりに重点を置いたザッポスの事例をご存知の方も多いと思います。
主に靴のECを行うザッポス(写真/数年前の本社訪問時)のサイトのすべてのページには、フリーダイヤルが掲載されており、24時間、年中無休で対応しています。
そして、そこでのコンタクトセンター社員の顧客対応がすばらしく、そのことが熱狂的なファンを生み出しました。
彼らはザッポスのサービスを褒め称え、クチコミで次々と新規顧客を呼び込むことになり、飛躍的な成長を遂げました。
このように、電話というメディアの有用性に注目し、メールにも電話にも対応できるコンタクトセンター機能を持ち、顧客とのコミュニケーションに積極的に活用しているEC事業者も増えています。デジタルかアナログかは、勿論その種類や手法は顧客や時間によっても変化していく。
そういうことも貯めていければ良いですね!