EC通販の「コンタクトセンター」まとめ

前回のブログ「EC通販のフルフィルメント業務の核となる「コンタクトセンター」その運営のポイントはコチラから。

コンタクトセンターのあるべき姿とは!?

①適切な管理指標の設定

○一般的指標としてのサービス品質、生産性

 サービス品質というと、コミュニケーターの受け答えの会話の品質のことを思い浮かべがちだが、それ以前に確実・迅速に電話応対ができているかといった視点が重要となる。お客様をお待たせしていないかということを中心として、お電話いただいたことに対する応答状態やご質問などにエスカレーションしたり、かけなおしたりすることなく即座にお答えできているかといった指標で状態を判断する。日別、時間別のコール数、応答数、あふれ呼数、放棄数といった大まかなデータは、NTT等電話会社からトラフィックデータとして電話番号(フリーダイヤル)単位で提供してもらえる。

 生産性とは、コールセンター内の人的生産性を測る指標であり、コミュニケーターがムダなく本来業務に従事できているかという稼働率やコミュニケーター単位での業務遂行状況を計測することで、効率的な運営ができているかを判断する。これらの指標を把握するには、コールセンター内に設置された電話交換機(PBX)のACD(着信呼自動分配装置)によるモニターデータやそれに連動したCTIシステムに蓄積されたログデータ等が必要となる。

○利益貢献の視点に立った収益性指標

 コンタクトセンターはプロフィットセンターであるという位置づけに立つとき、センター運営の業務効率や品質といった内部管理の指標だけでなく、どれだけ事業の収益に貢献しているかという収益性の視点が必要である。センター全体としてはもちろん、コミュニケーター別の売上・利益貢献度を計測し、コミュニケーターの評価にもつなげる。なお、コミュニケーター別の指標は受注の件数や絶対額などだけでなく、従事した時間(ログイン時間)あたり等の指標に置き換え、収益生産性の視点からも見る必要がある。

②業務標準化

○各種管理指標の積み上げによる業務基準・業務目標の明確化

 上述の各種管理指標を裏返してみると、時間当たりの架電数・通話時間をはじめとした各業務における基準値や改善目標値となる。全体はもちろん、コミュニケーターの活動指導や評価における共通の、ものさしともなる。

○スクリプトの活用

 スクリプトとは、演劇などで使われる台本を指す言葉だが、コンタクトセンターにおいては、電話での会話をスムーズに進める等、効果的な内容にするために書面化された標準的なトーク内容とその流れをまとめたものである。スクリプトを開発・活用することで、コミュニケーションを標準化し、コミュニケーター間のばらつきを低減することにつながる。

 更に、複数のスクリプトを同じ条件で実際に試すスクリプトテストを行うことにより、スムーズで効果の高いコミュニケーション方法を発見し、それを共有することにより、全体の生産効率やサービス品質が高まる。このスクリプトをコンタクトセンターのSV(スーパーバイザー)ごとに作ったり、システムは必要であるが、FAQやお勧めトークをコミュニケーターの画面に出してあげるというサポートもあれば心強い。

  もちろん、EC通販では声だけではなくWEBサイトやメルマガやステップメールや商品同梱物や情報誌などを顧客体験(CX)の立場でインテグレーションして、正しい商品理解やその使い方、またブランド体験や接客などをデジタルとアナログを駆使して実施したい。

③FAQやマニュアルの整備

○FAQ(よくあるご質問に対する回答)で即答、さらに問い合わせそのものを減らす

 FAQをまとめ、それをコミュニケーターに徹底することによって、問い合わせ対応において即答できる確率が高まり、お客様をお待たせすることが非常に少なくなる。また、質問が多い内容はカタログなどに事前に説明として付け加え、FAQそのものをインターネットのECサイト上に開示することで、質問そのものが減少する。

・マニュアルは常に更新し、最新の状態に

 業務標準化に欠かせないマニュアルだが、変更や改善点等が発生しても更新されていないことが多い。マニュアルは新人の教育・研修のテキストとなることが多く、旧い内容のマニュアルは現場に混乱を生む原因になることもあるため、常に最新の状態をキープすることが大切だ。

そして、この整備がチャットボットの活用やディープラーニング、AIへの基礎データともなっていく。

④実績データに基づく日別、時間帯別コール数の予測精度向上

○コール数予測に対応した日別、時間帯別人員シフトの実践とその精度向上

 コンタクトセンター運営コストのうち、最も大きいものが人件費である。コール量に応じて適切な人員を配置する必要があるが、実際にはリスクヘッジも含めて、過剰な人員シフトになりがちである。日別はもちろん、時間帯のレベルでコール数の予測精度が上がることによって、適正な人員配置のガイドラインを持つことができ、計画に基づいたムダのない運営につながる。

⑤コミュニケーターの教育・育成

○明確な育成方針に基づく教育プログラム

 導入教育期間は経験的に90日前後を必要とする。コミュニケーターとして必要な教育メニューを作成し、この期間に集中的な教育スケジュールで育成をする。まずは、企業の代表としてコミュニケーターにこの事業の全体像を理解していただくことが基本だ。

さらに、採用後も定期的な研修の実施をおこない、コミュニケーターの知識・スキルの状況確認とそのレベル向上をめざす。成績の優れたコミュニケーターを指導役としてコミュニケーター間の情報交換を促進するという方法も効果的だ。

○モニタリングを活用する

 モニタリングとは、通常、SV席などにあるセンター内の電話のモニター機能を使って、コミュニケーターとお客様との通話(やり取り)を聞くことである。管理者(SV、リーダークラス)がコミュニケーターとお客様とのトークを聞き、指導を行う。

営業におけるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、つまり、現場での実践指導にあたる活動といえる。

【日々のモニタリング】

 コミュニケーターが、受・架電中の時に行い、通話終了後、このトークについて改善点などの指示を行う。

【定期的なモニタリング】

 1週間程かけて、モニタリングを実施。時間をかけ、複数のトークを聞くことによって、コミュニケーターの商品理解度、お客様への対応を評価することができる。モニタリング期間終了後、コミュニケーターへの改善点の指示を行う。

○ロールプレイングで改善結果を確認・定着させる

 モニタリングを通じた指導の後や新しいスクリプトを開発した場合は、新たに架電を始める前に本番の通話を想定したロールプレイングを行い、トーク改善状況やトーク内容の確認をするというステップを踏むことが実効を上げるのに役立つ。

○モチベーション管理

コミュニケーターのモチベーションを管理することで業務効率は上がる。

1人ひとりが目標を立て、達成したコミュニケーターは努力をたたえ、表彰するといった目標管理を徹底することは必須だ。また、定期的な面談を実施し、モチベーションを刺激し、自分に関心をもたれていることを意識してもらう機会とする。その際に出された意見等は、積極的に採り入れ、反映させることで、参加意識も高まる。

⑥コ・ソーシングという考え方

 当社グループがプロデュースのコンタクトセンターはEC通販企業と一緒の施設やフロアーで共同運営するという手法を取る。経営や戦略面はEC通販企業と当社コンサルタントチームで、コンタクトセンターの運営の責任者はEC通販企業から任命いただき、現場運用や売上利益向上の戦術面は当社側のセンター長やSV職が担い、もちろんコミュニケーターも当社側の社員やパートタイマーのスタッフが一致団結して行う。まるでホテルの施設オーナーや本部と実際のホテル運用スタッフが別の会社であるように、そして勿論、コンシェルジェのようなCRMが実施できるように、マルチセンター(何社も仕事をコミュニケーターが兼務で行う)ではなく専用センターとして事業運営する。そういう意味でも「CRMセンター」と名付けている。

これからの人材難の時代には、また人事制度の違いなどを超えて、事業を共にするという観点でも参考になるのではないか。

 最後にコンタクトセンターは外部から見るとバックヤード業務のように見えがちであるが、前述のように営業職であり、広報職である。小さくても良いので、自社内で運営される事をお勧めする。もしくは規模感は相談事であるが、コールセンター会社に先任者を数人置いていただき、共同運営する。ここが実はEC通販を伸ばす秘訣の一つであることは、EC通販業界を30年ぐらい見てきた私としての結論でもある。