単品EC事業最適化のための7の鉄則

今回のシリーズの最終章。

 書き続けてきて、増版も出来たので、今回は最終章となります。
お陰様でAmazonでの販売も何度か在庫ゼロになり、現在はこのブログの最新原稿も反映された第4刷です。

単品ECで勝ち残れ!「単品EC ハンドブック」 A4タテ 127ページ 3刷 大型判www.amazon.co.jp

最終章の内容は下記になるので、文字数を見ながら何度かに分けるつもりです。
1.「EC通販は小売業+サービス業と理解する」 

2.「顧客接点であるコンタクトセンターを活用する」

3.「EC通販はテストとロールアウトの繰り返しをあきらめずに実施する」

4.「データベース・マーケティングを徹底的に活用する」

5.「経営者が率先してEC通販にあたる」

6.「やる気のある担当をつけ、専門家をパートナーにもつ」

7.「成功事例を研究し、つねに柔軟な発想をもつ」

鉄則1「EC通販は小売業+サービス業と理解する」

 現在、成長しているEC通販企業の多くは、本業で強みを持った上での企業と、ほぼ新規の参入企業である。これとは逆に、苦戦しているのは総合通販専業企業である。これはアパレル、雑貨など市場に飽和している商品が中心であることに起因している。いわゆる構造不況となっているためだ。EC通販を本業のビジネスの延長上でとらえ、片手間に実施すると、EC通販ビジネスは成立しない。EC通販は「独自のビジネス構造」をもっていることを認識することが重要である。

EC通販ビジネスの主な特徴は、次の通りである。

①「商品原価を低く」し、「粗利益を多く」しないと、ビジネスが成り立たない

 原価率30%(粗利益が70%となる)が理想だが、高くても原価率は50%以内に収めること。粗利益が少ない小売業のビジネス感覚では、通信販売は失敗する。(通販「3・3・4の法則」参照、一部の健康食品・化粧品は「1・5・4の法則」が適用される。)

②「販売促進活動が小売店の売り場」にあたるため「多くの販売促進費」がかかる

 EC通販は売り場を持たない。小売業の売り場にあたるものが、販売促進である。販売員の人件費、店舗経費がかからない代わりに、多くの販売促進費がかかる(理想的なのは30%前後、EC通販ビジネス導入時は100%以上かかる場合もある)ことの理解が必要である。売り場の説明員がDMやアウトバウンドと考えれば、販促費が多額となるのも現実だ。
 また大手モールの場合は販売手数料が10%は必要であることから、上記の販促費と考えて含むるべきで、またポイント負担や倉庫までの配送料なども考慮すると、いわゆるACOS(売上にしめる広告費)は5~10%におさめるのが理想となる。
 こちらは客単価に占める販促費という考え方がEC通販では重要で、いかに客単価を上げるか?例えばセット商品やギフト使用やお勧め商品の表示など、売り方の工夫にも連動する。

③「売上志向」でなく、「利益志向」で

 単品ECの場合、意外に売上の規模が小さくなる場合が多い。

それは、単品ECで成功するには、市場のセグメント(細分化)が重要なことに起因する。

したがって狙うのは小さい市場になり、大きな売上げは達成できないが「確実な利益」が得られる。その他、コンピュータ経費、通信費、物流費など、小売業やメーカーの経費とは違う構造にある。

売上拡大を狙うなら、1つのカテゴリーでしっかりと利益を出せる構造(EC通販ビジネス)を作り上げ、次のステップで新たな商品やカテゴリーを広げていくというのが定石だ。

化粧品の販売から始めて、健康食品に顧客ターゲット、商品ジャンルを広げるなどのパターンは最近も目に付く展開である。

小さな成功からそのノウハウを再利用するというのが可能なのがダイレクトマーケティングの特徴とも言える。

別観点で「D2C」はどうかと言うと、メーカー業も付加される。メーカーにも大別して2種で、商品企画や開発は自社内であるが、製造は委託の場合が多い。それと本来の製造業。生産設備を持つ会社。食品系に多いように思うが、製造直販である事から「小売業」や「サービス業」の感覚が薄い場合も多い。出来れば、直営店を持つか、下記のコールセンターを磨くか?
更にB2BとB2Cである部門は分離させて、定期的に共同ミーティングなど持つと良い。両方の感覚を持てるからだ。この両方「製造業」と「小売りサービス業」の感覚が鋭い会社が2030年代にも繁栄している気がする。

④商品機能だけでは購入は続かない、サービス業としていかにおもてなしできるかが重要

 事業構造から見てもサービス業(原価が低く営業経費が高率)と言えるEC通販は利用者の視点で見ると便利だとばかりは言えない。商品購入には都度、サイトへの入力や注文のTEL・ハガキを書かなければならないので店頭で買える便利さには負けている。にもかかわらずEC通販で利用してもらうには商品機能プラスアルファの何かが必要となる。その何かはサービス=おもてなしの満足度となる。

 例えば、製造業を横軸に、小売りサービス業を縦軸にとってマッピングしたとする。縦軸には製造色の高い=利益の高い商品を入れていく。さて、横軸をどう取るのか?という自問で自社のサービス範囲やチャネルや受注方法も整理できて、利益の高い商品群や、顧客をマッピングすれば、どういうサービスが顧客に心地良いのか?売り上げはこの面積であり、利益は十字の高さで整理していく事も出来るはずだ。

鉄則2「顧客接点であるコンタクトセンターを活用する」

「顧客の継続性」と「顧客拡大の仕組みづくり」が大切であることは既に述べた。特にEC運用もできるコンタクトセンターはEC通販には不可欠といえる。その理由は、メールや手紙、DMでの顧客接触だけでは顧客の状況が明確にしにくい。買わない理由を調査すると「なんとなく知らなかった」などの「メッセージが伝わっていないから購入していない」という理由が多くみられる。それだけでなく、商品やサービスがきちんと伝わっていないために誤解して購入を中止しているケースもある。

何とかお客様に正確に伝える方法はないかということを考えたとき、電話を活用することが思い浮かぶ。電話しませんということを誇らしく宣言している企業もあるが、これからの企業はやめたほうが良い。
なぜなら、正しい方法でテレマーケティングを行うことは顧客の満足度が高まる場合が多い。悪質なテレセールスの時代は終わりつつある。
自らやらないということは、コミュニケーションの手段を放棄していることになる。
経験から試算してみる。新聞折込広告で10万枚から100人獲得した。この方々にDMをして、15%相当の15人が注文してくれる(何も活動せずに同梱物などで即リピート5人を含めて合計20人が再注文)。
残りの80名のお客様へ電話をする。3回かけてお話できたお客様は約60%の48人。そのうち4人に1人が購入してくれると12人の注文が取れる。
電話をすることで合計32件(通常の注文5件+DMによる注文15件+電話発信による注文=12件)が得られる。電話をしないと20件で終わってしまう。電話による注文数50%アップは事業上極めて重要となる。デジタル偏重に陥ることなくアナログの良さを会社の武器として磨く必要がある。直営店や催事販売で顧客と対面できれば更に良いのだが、その次は声や動画など、そして手書きの手紙は人の心を打ちやすいものだ。そうして、信念を持ってテレマーケティングに取り組むべきだ。自らコンタクトセンターに積極的に取り組み、「顧客が満足した」と人に語る伝説を作るつもりで前向きに考えてもらいたい。
 
ただし、電話など面倒だ、という顧客層は一定数いるし、Amazonなどではコールセンターを縮小している。例えば、弊社の実験的ブランドである男性コスメの「GAコスメティックス」はAmazon中心に販売させていただている。

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アマゾンの場合は顧客への電話は配送確認など(その他、一部の商品内容確認など=基本は暗号化されているeメールを使用)の場合に限られており、顧客対応はAmazonのセンターがやるというのが鉄則なので。
顧客からの電話は滅多にない【ただし、営業電話は多い:(笑)】。

この鉄則2は所謂、自社サイト中心や顧客との出会いが電話(TVや新聞やラジオ通販など)の場合は重要である、という補足を付け加えておく。
さて、3,000文字に到達しそうなので、次回に譲る。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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