EC通販の「フルフィルメント戦略」のポイント

(1)フルフィルメントが重要な理由

 一昨年に発行した「単品EC本」も最後に差し掛かってきました。コロナ禍の影響を加味して、事例を増やした改版「2023年版」は先週からAmazonで販売スタートをさせていただきました。タイトルが変更できず、旧版のままですが、今週からは新版でお届けしております。

さて、フルフィルメントについて。そういえば、Amazonの倉庫もフルフィルメントセンターですね。

①フルフィルメントは唯一の顧客との接点である

 フルフィルメントとはEC通販における「受注から配送、代金回収、アフターサービスまでの完結業務を差す用語」だ。いかに効率よく、早く的確に進めるかが重要な課題となる。
同時にフルフィルメントはEC通販の場合、顧客に直接的に接する数少ない業務だ。受注時の電話での受け答えやメールやチャットでのやり取り、配送時の配達員の態度までが企業の印象を決定することを肝に命じておかなくてはならない。店舗においては裏方業務であるフルフィルメントが、通販においては表舞台になるのだ。地味な作業ではあるが、通販マネジメント実行サイクルの要となる業務である。フルフィルメントが重要な理由は次の4つにまとめられる。

②注文キャンセル・返品を防止する

 フルフィルメントがキャンセル・返品率に与える影響度は20~40%あるといわれている。商品到着は受注日より遅くとも1週間以内にすること。早ければ早いほど返品率は少ないからだ。健康食品会社の場合、サンプル請求者へのお届けは2日以内、商品注文の場合も3日前後といわれている。

単品ECの場合は総合ECのように複雑な在庫管理が必要ないので、迅速な配送手配が可能なはずだ。

③フルフィルメント・サービスが顧客の満足度を決定する

 顧客との最初の接点が受注時の電話やカート内でのメッセージであり、ここで企業の印象が決定するといっても過言ではない。もし、ここで顧客に好印象を与えることができたなら、再受注の可能性も高くなる。テキパキとした臨機応変、明るい対応で、かつ事務的でない心のこもった対応を心がけたい。それは単品ECの場合のメール連絡も同様だ。こちらは顔も声もないかわりに文章の微妙なトーンが顧客の印象を変えてしまう。事務的すぎず、フレンドリーすぎず、バカ丁寧すぎず、暖かみのある文章が望ましい。

また、商品到着時には、商品の梱包がきちんときれいにしてあること。多少の高級感もあった方がうれしいし、請求書が正確に整然と配送されることも顧客の安心感につながる。ただし、SDGsが叫ばれる昨今、過剰包装にならない事やごみ捨ての事まで配慮しているとなると好印象となる。

④事業全体の利益率に与える影響が大きい

 多数の人員の投入や商品スペースの確保が必要になる。また、コンピュータの導入も先行投資になる。フルフィルメント計画は慎重に行いたい。
フルフィルメント経費が売上の10%以上を占める事が多くなるEC通販業では利益を作るのは、この項目も大変重要となる。小規模の間は自社出荷で、規模が大きくなってきた場合や繁忙期は外部のいわゆるサードパーティに協力を仰いだ方が配送料そのものが安くなるなど、BCP観点での2拠点化など検討することは多い。

⑤クレームヘ積極的に対応が重要

 クレームヘの機敏な対応がファンの固定化につながることは、接客の基本だ。クレーム発生時こそ、積極的なコミュニケーションを図り、また商品や業務改善のチャンスとして活用すべきだ。クレーム=最初はお問い合わせなので、思わぬ改善点を得ることも多い。

そのために、クレームをコミュニケーター個人の裁量に任せるのではなく、全体としてクレーム情報を共有できるシステムをつくりあげることが必要となる。

次回はこのフルフィルメントの効率運用について触れたい。