単品ECのススメ

写真は弊社の実験用サイト「GAコスメティックス」

「単品EC®」とは?

 EC通販は平成デフレの中でも着実に成長してきた。全体の趨勢の中で、食品、健康食品、化粧品などの【単品通販®】という商品ジャンルやテレビショッピングという手法のEC通販企業の伸びが目立っていた。このことは、EC通販のなかでも特徴をもった特化した企業が好業績をあげていることを示している。
つまり、現在のEC通販の流れは総合通販から、単品EC(DTC)へ向かっていることと一部のプラットフォーマーの寡占化の二極化とも言える。
「単品EC」とは、扱う商品ジャンルが単品のEC通販である。「単品EC」は現在、私たちの回りに溢れている。ECサイトや紙媒体以外にも、深夜にTVのスイッチをつければ、番組形式の通販や、長めのスポット通販CMが流れている。CSテレビなら24時間放送の通販番組専門チャンネルもある。これらの番組で紹介されるヒット商品は「単品通販」というスタイルの通販が多い。そして、スマートフォン対応による「単品EC」拡大の流れはますます顕著となる。

(1)「単品EC®」という通販ビジネスモデル

これから始めるメーカーさんや飲食業さん向けのセミナー

1つの商品をクローズアップし、商品のメリットを「これでもかと微に入り細に入り、訴求し説得していく」。これが「単品EC」の基本スタイルである。しかし、もちろん、それだけではない。
単品ECと従来型のモールでの通販との違いは、1つの商品あたりの情報量が圧倒的に違うことにある。コンテンツ数の多いサイトやアナログでも分厚いカタログの1商品として、小さなスペースで写真と一行のキャッチコピー、スペックだけで売られる商品と、長いLPやチラシの両面を使った写真とコピーで売られる商品では、情報の量と質の差が大きいのも当然である。逆説的にいえば、「多くを語れない、語るべき魅力のない商品」は、単品EC向きではないといえよう。
○モノより「由来物語(ストーリー)」を売る通販
 
(公社)日本通信販売協会に加盟する通販会社の中で6割が兼業で、4割が専業となっている。その主流を占める兼業の中では製造業の割合が高くなっており、製造業で生産者が直接、通販するケースが増えている。この場合、DTC/単品ECということになる。実際、新規に加入した企業を見ると7~8割が単品通販である。単品ECは製造業者や生産者が実施する場合が多い。その理由は商品を知り尽くした者が商品について語る。商品作りの苦労を語り、商品への思い入れを語ることで成功するのが単品ECだからだ。

単品ECの場合、商品にまつわる「由来物語」の如何が、売上げの善し悪しを決める場合が多い。同じ商品であっても、物語次第で売れる場合と、売れない場合がある。だから、単品ECを始めるなら、ユーザーの琴線に触れる物語作りが必要となる。もちろん、ノンフィクションであることはいうまでもない。

(2)通販史から見る「単品EC」の必然性

 1970年代、80年代の通販は「ディノス」「ニッセン」「セシール」「ベル・メゾン」と大手のカタログが出揃い、ファッション・カタログ通販は全盛期を迎える。衣料品を中心としたこれら専業通販各社は、この時期、平均年率15~16%の伸びを見せ、小売市場の中に通販というポジションを形成した。ユーザーにとっては、デザインがそこそこ優れていて、価格が手頃、さらに種類が豊富で、好みにあった商品が安価に入手できるのが通販の魅力だった。1990年代はカタログが細分化し、専門化してゆく時代だった。ガーデニング専門カタログ、輸入インテリア専門カタログ、ファッションもテイスト別・年代別に、細分化されていった。その背景には当然ユーザーの変化がある。普通の商品では満足しなくなったのだ。

「安くてもいらないものは、いらない。」「好みに合わないものはいらない。」とはっきりと断言するユーザーが誕生し、カタログのマーチャンダイジングには他社とは違う独自の視点やコンセプトが求められるようになった。そんな時ユーザーに支持されたカタログの1つに「通販生活」がある。体裁はカタログであったが、中味は「単品通販」の集合体であり、このカタログがその後の「単品通販」の時代に与えた影響は大きい。

いよいよ21世紀を迎える頃になって、本格的な「単品通販」の時代がやってきた。「単品通販」の守備範囲は故郷の特産物から外国製の洗剤までと幅広く、どれもお喋り過ぎるほどに自己主張の強い商品だ。あるものはゆったりとした口調で商品の由来を語り、あるものは外国人が早口で機能を語り尽くす。今、生活者はこれらの商品の何を買うのか?生活者はホントにモノが欲しくて買うのか?どうもそれだけではないようである。生活者はモノを買う過程を楽しんでいるというのも一方にある。

デパートの地下で買うフグ刺しよりも、産直品のフグ刺しの方が嬉しいのは、フグにまつわる物語に感動し心が動かされるからといえる。どちらのフグも口に入れると確かに旨い。しかし、「これが、あの苦労から生まれたフグなのか!」と思うことができたら、産地の風景や風を思い浮かべることができたなら、旨さも倍増する。そして、スマートフォンで即注文する。昨今の若い方々が憧れのインフルエンサーやユーチューバーがおすすめするアパレルやファッション小物、雑貨をライブコマースで買うのも同じ現象である。だから、インターネットの普及とスマートフォンを日常的に多用する現代では、この「単品EC」は「商品+感動パック」という言い方もできる。モノはもういらないというユーザーに対して提供するものは、心のご馳走であり、感動である。

(3)単品ECの商品コンセプト

 1つのジャンルの商品でEC通販をするため、新規参入がしやすいことはいうまでもない。しかし、その単品に魅力がなければ、EC通販でも成功することはできない。EC通販における商品の魅力とは「生活者の困った点を解決する商品」であり、「生活者の暮らしを豊かにする商品」である。つまり、生活者ニーズやウォンツにマッチした商品であることが重要だ。

ニッチな悩み解決型/例)ひげそり負け予防のスキンケア

したがって現在の具体的な商品コンセプトとしては、生活者の「健康志向」「文化志向」「生活の便利志向」「節約志向」「グルメ志向」にマッチしていることや、生活者の「知的生活の向上」「コミュニケーションづくり」に役立つことが要求される。

EC通販の場合、こうしたコンセプトをより鮮明に打ち出し、なぜEC通販商品なのかの「こだわり」に徹することが肝心となるのである。

(4)現在実施されている単品ECジャンル

 では、どんな商品ジャンルが含まれるか。現在実施されている単品ECには食品、産地直送食品、健康食品、健康器具、美容機器、化粧品、旅行、保険、縁起物、印章、育毛・かつら、通信教育など多くのジャンルにまたがっている。

(5)単品ECは経営手法である

 単品ECとは経営手法であり、また同時に1デジタルマーケティング手法でもある。そして、サプリメントやスキンケアやヘアケア商品を扱う企業が多く、日常的に使用頻度が高く、もちろん購入頻度も高い。使用頻度という観点では家具もそうだが、購入頻度は決して高くない。しかしながら、家具メーカーが雑貨や趣味の小物などをコレクション方式などで購入頻度を上げれば、立派な単品ECが出来上がり、またスーツなどもカテゴリーを絞り、1ジャンル2価格帯のみにして、購入頻度はシャツやチーフなどの使用頻度も高く、購入回数も多い、そして半消耗品(SDGs的には…も考えて)と位置付けて、着こなしなどの啓蒙をSNSやコンテンツ発信していく。できれば購入はサブスクリプションを使い倶楽部化などが出来れば、単品ECが出来上がる。購入者の趣味やサイズなどEメールや住所以外の情報(データベース)があれば、単品ECとして事業強化できる。こういう事から単品ECは経営手法である。

また軽減税率の食品やふるさと納税の商品も顧客とつながり、その購入理由やどうすればリピートしていただけるのか?を考え、仕組み化していくことで単品ECと進化していける可能性が高い
今回はある中小企業診断士さんから聞かれたので、休日にまとめ直すというすごし方をしてみた。

次回は、この手法のメリットとデメリットにも触れる。