なぜ、EC通販か?(D2Cから単品ECまで)

1.EC通販業は一般の小売業とここが違う

 EC通販の事業とは、エンドユーザー向けに販売することであるとすれば、小売業であり、小売業の経営技術や接客技術が必要なことはもちろんである。それに加えいわゆる一般の小売業とは全く違うものもある。
その特徴をまとめると、次の6つに集約できる。

(1)低い投資コストで事業展開できる

 リアル店舗を出店しようとすると、土地の確保、建物の建築・内装や外装、人の確保と教育などを考えると膨大な費用を要する。EC通販の場合、コンピュータやシステムの導入などのコストがかかるとしても、店舖をもたないで営業できることによって、投資コストがかなり節約できる。
今やスマホ1台で営業開始がスタートできる低コストビジネスの代表格ともいえる。

 例えば、店舗の場合は内装の異なるごく小さな店舗を3店舗を同時に営業して、効率の良い店舗を残すなど、現実不可能だが、EC通販の場合は売り場が広告なので、3種類の異なる表現で販売することが可能ということからも低い投資コストといえる。LP(ランディングページ)3種でテスト販売をすることなどは決して珍しくない。

(2)事業参入がしやすい

 低コストで規制が少ないことが参入をしやすくしている。法的にはEC通販は、特定商取引法は訪問販売法と比較して法律の規制は少ないとも言える。それは自宅や特殊な会場で販売員にセールスされる訪問販売とは異なり、購入者の冷静な判断により注文行為がなされるという内容によっている。
関連するものとして特定商取引法のほか、広告や販促には景品表示法、不当表示防止法があり、食品や健康食品は食品衛生法や薬機法や健康増進法など、それぞれの法令を遵守することが重要である。
インターネットの普及により、ネットショップを始める企業や個人事業主も多く見受けられ、参入をしやすくしている。しかし「参入がしやすい」ことは、逆に「撤退もしやすい」ことにもつながり、安易に参入し安易に撒退する例が多く見受けられる。始めやすいが成功しにくい業態といえる。

(3)営業する場所や時間を選ばない。24時間稼働できる

 EC通販がリアル店舗を要しないということは、いつでも、どこでも営業できるということである。代わりに店舗にあたるものは、広告などの販売促進(ECサイトや広告紙面やカタログ)である。広告や販売促進はいつでも、どこでも実施できる。EC通販の成功企業は地方にある場合が多い。土地代の高い東京にオフィスを構える必要は全くない。むしろ地方であることが人材や設備を持つことに有利に働くことが多い。テレワーク下の職種としても注目されるわけである。

営業時間が24時間あるということだけではない。時間の効率的な業務分担により、昼間は受注活動に専念し、夜の時間に配送などを実施すれば、コンビニエンスストア同様かそれ以上の対応が可能。また、自動応答装置(チャットボット等)を導入すれば、24時間受注受付の初期接客も可能だ。
顧客の年代や性別による体制を用意することで店舗以上の強みを発揮することが可能だ。

(4)価格の決定権が事業主にある

 メーカーの場合は希望小売価格という形で価格設定できるものの、小売価格への発言力は弱い。一方、小売業の場合はメーカー希望小売価格で売らないと利益確保ができず、値引きをしてもわずかな粗利益を削っての販売価格で、自主性が持てない

オープン価格が導入されたといっても、高い価格に設定しようものなら、商品は売れなくなる。これに比べ、EC通販は企業が自分で最終価格を決定できる魅力がある。そして柔軟な運営、例えばタイムセールや特別な顧客だけにクーポンを表示するなど。また時間や季節で価格を変動させるダイナミックプライシングなど。D2Cならでは魅力とも言える。

(5)他社に関係なく自分に全ての責任がある販売である

 価格同様で販売に関する全てのことを自分で決めることが可能である。例えば販売方法について、商品が化粧品などであればサンプルを渡してから購入してもらうことや、無料で使ってもらうモニター販売、気に入らなければ返金することを約束するなど、サービスやプレゼントなど自由に決めることができる。他社に負けないために自由な発想でサービスを実施することが可能となる。まさに販売者のアイデアとビジネスセンスが試される。逆にいえば、事業がうまくいかない場合は全て自分の責任となり、誰にも文句は言えない。個人主義的な販売法だ。そのような理由からかオーナー企業で成功している会社が多い。また各種の決定や変更などリアルタイムで行う必要があるので大組織よりリーダーシップの強い小組織向きとも言える。

(6)計画経営ができる

 EC通販は「テストマーケティング」や各種分析などによる「顧客管理」「販売管再度のどの計数管理によって、的確な販売予測をすることができる。そのため商品計画、販売計画が立てやすい。つまり、計画経営ができる。そのため、無駄な業務や余分な出費が少なくなる。

EC通販ビジネスは商品の企画開発から製造(仕入)、店(広告やカタログ・DM)を作り、お客様へ直接コンタクトをとり、商品の注文を受付け、お客様へ届けるという小売業だ。
農家が自分の畑で栽培した作物を自分で加工して商品にし、そのネーミングも自分で考え、買ってくれそうな消費者に自分で売りに行き、お届け代金もいただくということだと考えてほしい。

極めて、原始的な直接販売ということなので、楽ではないが、全て自分で意志決定できる販売方法と思い、楽しく進めていただきたい。

そして、最後におススメするのが自分や自社が気に入って作った少数の商品を自ら使用しながら、友人にもお勧めするという「単品EC」という発想である。